このエントリは後編です。前編はこちら。
- 前回までのあらすじ
- 注意
- 予習
- 必要なもの
- 電源を切ってバッテリーを外す
- 破損したドライブユニットを取り外す
- モータの取り外し
- エンコーダとピニオンギアの取り外し
- モータの分解
- ひたすら掃除
- 再組立て
- まとめ
前回までのあらすじ
AnkerのEufy Robovac 11Sの左側のタイヤが故障して動かなくなりました。 サポートに連絡するも微妙に保証期間が過ぎていてメーカ修理不可。しかしネットを検索すると、全く同様の症状のEufyを修理している人をYouTubeで発見。 このエントリはその動画を真似して修理してみた時の記録のメモです。
注意
- 当然ですが、分解するとメーカの保証は受けられなくなります。
- 本エントリーや本エントリーで紹介している動画を見て発生した如何なる損害も責任を負いません。自己責任で。
- 時間と工具と根気が必要です。
- 写真を撮りながら進めると組み立て直すときに便利です
- ロボット掃除機には大容量のリチウムイオン電池が搭載されています。取り扱いには十分注意してください。火災等の危険があります
予習
以下の動画を見て手順を確認します。英語ですがめちゃくちゃわかりやすい(投稿者はアメリカの方みたい)。 この動画は一世代前のEufy11の修理手順なので、少し分解手順や使われている部品がやや異なりますが11sの修理でもかなり参考になります。 (11sではタイヤのユニットは本体を分解しなくても取り外せるので動画より簡単です)。
ROBOVAC MOTOR REPAIR - SPINNING NOT WORKING - FIX EUFY and OTHERS
同じ人がEufy 11Sの分解動画もアップしているのでこちらも参考になります。
DISASSEMBLE EUFY 11S (SLIM) FOR REPAIR OR PARTS REPLACEMENT
正直、この動画見たらこのエントリ読まなくてもできると思います。
必要なもの
- ドライバー各種
- ニッパー / ラジオペンチ
- はんだごて/ はんだ / はんだ吸い取り線
- 外した部品を一時保管するための器
- (あれば)接点復活剤(コンタクトスプレー)
- 9V電池(モータテスト用)
- カッター / ピンセット / ティッシュ他
電源を切ってバッテリーを外す
分解前に安全のためメインスイッチを切ってバッテリーを取り外します。 バッテリーは裏面からネジを外すだけで簡単にアクセスできます。
バッテリーを引き出してコネクターを外します。
バッテリー。Hu Nan Giantsun power Electronics製のPA04というモデルが使われています。14.4V 2600mAhです。
破損したドライブユニットを取り外す
前編でも説明しましたが、破損した側のドライブユニットを取り外します。 ネジを四本外すと外れます。サスペンション用のばねで本体とつながっているので注意。上で紹介したYouTubeのEufy 11Sの分解動画が参考になります。
外したら、コネクターを引き抜きます。
ユニットが取り外せました。
モータの取り外し
ドライブユニットからモータを取り外します。 まずは、ネジを外してギヤボックスを開けます。
開けたらモータを固定しているネジ2本を緩めると、モータが取り外せます。
ピニオンギアとエンコーダがついています。
モータは台湾のNICHIBO製。型番はMP5BFN 14165WB-RC-CE/51。下には88K58と記載あり。
以下のM5FNというシリーズのカーボンブラシモータが使われているようです。カタログのMP5FN-14165-Rというモデルが一番近いです。カタログの図面と実測寸法がエンコーダが取り付けられるようになっている端子側やケースの穴の位置などを除くとよく似ています。
同じカタログの11ページを見るとかなり細かくカスタマイズして発注する仕組みみたいです。 個人向けではないのでこのモータだけ購入するのは難しそうですね。Ankerがスペアパーツの販売を日本でも始めてくれることを願います。
エンコーダとピニオンギアの取り外し
エンコーダの上についているプラスチック製の円盤状の部品を取り外します。
おそらく、このプラスチック部品の回転速度をエンコーダで読み取って掃除機の移動速度を制御しているんだと思います。 YouTubeの動画と比較するとEufy11と11Sでこの部分の仕組みが少し変わっていますね。少しずつ改良されてるっぽくて面白い。分解した甲斐があります。
この修理の第一の難関。エンコーダの取り外しです。モータの電極に直接はんだ付けされているのではんだごてとはんだ吸い取り線を使ってはんだを取り除きます。
部品が小さい+不安定なので少しやりにくいです。モータをエンコーダ側を上にして安定した状態で作業できるように工夫します。はんだを取り除いたらエンコーダを引き抜きます。ぴったりはまっているので、私はモータとエンコーダの間にマイナスドライバーを差し込んで抜きました(基板上の部品を傷つけないように注意)。
取り外したエンコーダ。
エンコーダモータの端子には極性があるので注意します。モータの赤い丸がついているほうがプラス。基板にもプラスのマークがあるので戻すときに注意してください。
つづいて、ピニオンギアを取り外します。ギアとモータの隙間はSIMカードの厚みと同じぐらい。
すべての部品が外れました(写真では+側にマーキングしてあります)。
Eufy11と違って、モータの端子部分がはんだ付け後に切られていますね。 短いのでこの後の作業がやりにくいです。
モータの分解
つづいてモータの分解です。そもそもこのモータは分解を想定していないので分解しにくいです。 ここが一番の難所です。
まず、4本のツメを外して背面の蓋を外します。 このツメを外すのが地味に大変です。筒と同じ位置まで戻さないと蓋が外せません(ラジオペンチで作業しましたが、結構時間がかかりました)。
ツメを外したら、端子をペンチとかで引き上げると蓋も一緒に上がってきます。
ここも根気がいりますが、蓋と筒の間に隙間が空いたら精密ドライバー等を差し込んで、隙間を広げて取り外します。
外した蓋の裏側。カーボンダストだらけ。
シャフトについているストッパーのようなプラスチックの部品(3つ)を取り外します。(なくさないように注意)
この円盤状のプラスチック部品はすべてサイズが違うので順番を覚えておくこと。一番下が一番直径が大きいです。
ブラシを引き上げます。引き出す前にブラシと筒の位置関係がわかるように印をつけておきます。 ブラシはシャフト側の端子部分にばねの力で押し付けられているので取り外しは慎重に。
分解はこれで完了です!お疲れ様でした。
内部の様子。めちゃくちゃ汚い。YouTubeの動画によると整流子がカーボンダストで汚れて端子同士がショートしているのが故障の原因だそうです。
ひたすら掃除
あとは、ひたすら汚れを落とします。特に整流子の絶縁部分の汚れは奇麗に落として、絶縁が保たれるようにします。 今回は汚れ落としにコンタクトスプレーを使いました。
●特殊置換性オイルがカーボンや汚れ、異物を除去し、電気接点の接触不良を解消します。
●接点部の摩擦を軽減し、腐食から保護します。
とあるので、今回の目的に最適です。プラスチックも侵さないので安心して使えます。
掃除した後の写真。きれいになりました。
再組立て
気が済むまで掃除したら逆順で組み立てなおしていきます。
整流子と蓋を取り付けます。蓋のツメは完全には戻せないので、外れない程度に頑張って戻します。整流子と筒の位置関係に注意。分解前につけておいた目印を手掛かりに同じ位置に戻します。
エンコーダをはんだ付けする前に、9V電池につないでうまく動くかテストします。
ちゃんと回転すればちゃんと修理できてます。回転させると筒の穴の部分から、最初は接点復活剤が染み出してくるので注意。
ピニオンギアを取り付けます。モータとの隙間が同じになるようにします。
エンコーダを取り付けて再度はんだ付けをします。
プラスチックの回転円盤を取り付けます。エンコーダ表面に実装されている部品との距離に注意して取り付けます。
あとはギヤボックスに組付け直して、バッテリーを接続しなおせば完了です。 無事動くようになりました。何回か部屋の掃除をさせてみましたが、今のところ正常に動いています。
まとめ
- 工具とはんだとはんだ吸い取り線ぐらいがあれば、お金をかけずに修理できますが、時間は結構かかります。(3時間ぐらい?)
- 難易度はそんなに高くないですが、はんだ付けの経験とDCモータの知識ぐらいは最低限必要です。
- とくに、モータは分解が想定されていないので蓋を外すのが大変です。
交換部品の販売が日本でも始まればこんなめんどくさいことしなくてもよいのですが…
交換部品さえ入手できるようになれば、安価な部品の交換だけで長期間使用できるようになるので、Eufyのコストパフォーマンスは圧倒的になるんですけどね。